北欧見聞録 救助編

 船長日誌 西暦050228 03.35

 ギルドの依頼をこなしてロンドンに戻ると、北欧の方で難破して行方不明になっている英国商船がおり、救助に向かえという一方的な通告があった。こんな離れたとこから救助に向かうようじゃ助かるものも助からないだろうに、さすがお役人のんきな話だ。個人の感情はどうあれ、仕事を選べるほど裕福な身ではないので、一路北欧へ。
 当初ロンドン←→オスロ間を無補給予定の航路で進んでいたが、根性無しの水夫達が栄養失調になり、やむなくハンブルグ経由になった。これじゃまるでわたしが部下に食事させてないようじゃないか。どっかの王子と違って給料未払いの不渡りも出したこと無いし、水と食料も尽きたことなんか無いのに。

 オスロにつくと現地の職員が問題の船はオスロ←→コペンハーゲン間で行方がわからなくなったので、探して救援物資を届けて欲しいとのこと。いやだからわたし待つ暇あったら自分で行けよ。と思いつつも下手にでて愛想笑い浮かべつつ、受領し出発。

 何度か往復した後、問題の船発見。・・・商用バルシャかい。そんなのでこんな物騒な海域うろついてたら難破するのも当然だ。無謀すぎ。しかし、遭難したという話を聞いてから一ヶ月以上経ってるはずなのに、あんた元気だな。しかもなんか笑ってるよ。普通もうちょっと申し訳ないとか愁傷そうな顔するもんだろ。嘘でも。

 捜索を済ませオスロに戻り港に入ると、例の遭難した親父がもう戻ってきてさっきまで、わたし達の捜索の手際を誉めてたとのこと。待て、うちらあの親父より先にあそこ離れて全速で戻ってたった今着いたばかりだというのに、なんでさっきまで沈みかけてた船の方が先についてるんだ・・・。
 何か不条理な物を感じつつ、街に入るとライザがいて何か言っているが興味無いので話半分で聞き流す。だいたい前回、借金返済で金を届に行って相手が金受け取ってくれず、無駄足踏まされた上に、てっきり突っ返された返済金を報酬としてくれると思ったのに、あっさり懐に戻しやがって、挙句にお礼の言葉と食い物でごまかされたのでこいつら嫌いだ。どうせそのうちまたこっちを只働き同然でこき使うつもりだろう。庶民は貴族様の為にお仕えさせてもらってありがとうございますとかなんとかいいながら喜んで働くと勘違いしてるに決まってる。Xね。

 ロンドンに戻るとライザの兄貴が逮捕されたとのニュースが入る。大慌てでライザは王宮に向かい、わたしにも着いて来いとのたまう。正直、世の中舐めた天罰だXXXXと思った。他に仕事あって忙しいのに、なんでわたしが付いて行かないといけないんだ。そもそも正装してないから王宮なんて絶対入れないはずなのに、無理矢理押し通り、わたしを王宮の中まで引き摺り込む。貧乏貴族の分際で勘違いして、そんなことするから敵作るんだよ。
 王宮の中で動向を見守っていると、ライザとでこっぱち卿がなにやら言い争っているが、やはり庶民には興味の無い話なので聞き流し、衛兵の人たちと世間話などしてみる。「ひそひそ。」「え?なに?大きな声で話すと怒られる?」「宮仕えも大変っすねー。」「お偉いさんたちは適当にはいはい返事して、おだててればいいんすよ。」「参考になるなー。」とかなんとか。いずこも同じらしい。
 そうこうして暇つぶしているとライザとでこっぱち卿の話終わったらしく、王宮から街に放り出される。ライザがまた何か言ってたがやはり適当に聞き流し、適当に相づちうってそのまま別れた。
 ん?国家反逆で捕まったって事は政治犯だからロンドン塔に収監?兄貴と面会出来てればあの怨念が染み付き、怨さの声が響き渡るロンドン塔に行けたかもしれなかったって事?うわ、しまった。こんなことならライザの弁護して面会勝ち取るんだった。

 と明後日の方向に後悔して終わる。