3日目の浮気

 船長日誌 西暦050305 03.45

 材料が揃ったので、非売品服なぞ作ってバザールに出してみる。全然売れない。♂用のコタルディと♀用の羊皮飾ペチコートそれぞれ2着づつ仕立てるのに材料仕入れただけで、資産状態はかなり悪化しており、しかもこのまま売れず持ち歩いていると、どんどん劣化して商品価値も無くなっていく。非常にまずい。
 なんとかせねばいろんな意味で身動きすら取れなくなるのは明白。そんなわけでバザールに出展したまま地味に営業することにする。そもそも♂用のコタルディは試着も出来ないため、どんな外観になるのかすらさっぱり不明。しかも非売品だから買う側もどんなだかわからないという始末。それで売ろうというのもかなり無理がある。
 そんなわけで、とりあえずたまたま地中海方面で発掘中の社長に試着して気に入ってもらえたらお買い上げいただけないかと交渉してみると「いいよ」との気軽なお返事。アポイントを取り付け、いざ商談先のリスボン酒場へ。

 リスボン到着。既に社長は酒場で飲んでいるらしい。いかん、お客を待たせるなど商人失格だ。大急ぎで酒場に駆けつけ、カウンターでまずは駆けつけ3杯。ほろ酔いになっていい気分になったところで、テーブル席で飲んでる社長にまずは一杯振舞って商談前の先制攻撃。よし、驚いてる。これで待たせた分はチャラだ。早速、服を引き渡しまずは試着を薦めて見る。

 「おお、これはいい!!」という社長の全く予想外の言葉に思わず振り返ってみると、そこには見事にコタルディを着こなした社長の姿があり、思わず飲みかけのミルクを噴き出してしまった。
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 社長、あなたハマりすぎです。

 発掘家のはずなのに見た目まるっきりただの山賊の親父。どー見ても普段砂漠で駱駝乗り回してシミター振り回し喜々として略奪繰り返してるようにしか見えませんよ!アルコール廻って服がいたくお気に入りいただけたようで、バイオリンの独演まではじめ、薄暗い酒場の雰囲気と相俟って恐ろしくヤバイ怪しさが醸し出される。

 結局、お情けで買ってもらうはずが二人とも大満足という不思議な結果に終わり、ご祝儀を弾んでもらうなんとか赤字分が微量ながら埋め合わされた。社長に引き渡した服は標準より防御面に優れた(+3)の高品質品ではあったものの、それにしてもまさかあんな服だったとは・・・。

 商談を終え無事ロンドンに帰り着いたところ、他の友人達もロンドンへ終結するとのことで、早速他の皆にも売れないかどうか営業をかけてみるが、社長のインパクトが強すぎて、いまいち受けが悪い。体型も違うし、こればっかりは仕方ない。どうにも♂用コタルディの在庫をはける自信が全く無いので注文しておいたレシピの代価と一緒にあまりの在庫を虎さんに進呈。なんとかエリシアにお情けで♀用羊皮飾ペチコートの注文を取り付け、エリシアが近場の仕事で出かけている間に作成ということで商談がまとまった。

 ペチコートの製作を終え、ロンドンに戻るとエリシアはまだ戻っていないようだったのでどうしたものかと思っていると、街中で「羊皮飾ペチコート誰か作れる人いませんかー?」と叫んでいるご婦人がいたので、話し掛けてみるととんどん拍子に話が進み、あっさり商談成立。エリシアに引き渡し予定だった服を売り渡す。

 「毎度あり、またよろー」「はーい」等と和気藹々と取引を済ませた直後に、今帰ったぞーというエリシアからの連絡が入る。まずい、まるで亭主の留守に浮気したような心境だ。ちっ、もうちょっと帰り遅いと思っていたのに。早い、早すぎる帰宅だよ。どうする?どうしよう?と思ったものの、他に説明のしようがないので正直に告白することにした。「ごめんなさい。引渡し予定だった羊皮飾ペチコートたった今、他の人に売っちゃった。てへっ」「なにー!?」「すぐ用意するからちょっと待っててー」「おのれ、どうせ金積まれたんだろう」等とやり取りしてる間に酒場へと走り、ミルクを飲んで心を落ち着かせた。

 すると「おー、今、酒場で演奏会やってる」とエリシアの声が聞こえてくる。ぶっ、ミルク噴いた。なんでエリシアさんここにいるの。と件の演奏してる人を見ると今度はさっきエリシアに引き渡し予定だったペチコートを引き渡したさっきのお嬢さんがタンバリンを叩き、バイオリンを奏でる姿が。またミルク噴いた。
 恐る恐る、その状況を小声でエリシアに伝えると「ムキー!この泥棒ネコめ!」等とさっきまでおひねり投げそうな様子だったのに、今はその相手が旦那の浮気相手だったという驚愕の事実を知ったかのような事態に(※実際にはチャットルーム内の会話なのでお嬢さんには聞こえてません)。

 ごめんなさい、悪いのはわたくしめでございます。もうしません。確約は出来ないけどw

 でも、最初の注文受けたとき、そんなに欲しそうじゃなかったじゃないかーと言い訳してみる。その後、無事ペチコートを引き渡し完了したものの、いやー、やっぱり浮気はよくないね。うん。旧知の間じゃなかったらそもそも絶対やってなかったけど。

 そして小銭が貯まったので船を新調。一回り大きくなってマストも1本増え、速度も増加。結構いい感じ。出かける度に嵐に遭うわ、猛吹雪に遭うわでそのたびに水夫が数人流された上に毎回座礁してたけど。やっぱり罰あたったんだろうか。

 浮気の。